火曜日, 6月 29, 2021

たかが塗り絵、されど塗り絵

 皆さん、こんにちは。

関東地方も入梅し、ジメジメどんよりの季節に突入です。世の中の情勢プラス天候でますます自宅での時間が増えますね。さて、今日はそんなおうち時間を患者様とご家族様双方が少しでも楽しく快適に過ごしていただけるような活動提供の仕方についてのお話をしたいと思います。

今回提供する活動は『塗り絵』。日本全国多くの、いやほとんどのデイケアで行われている活動と言っても過言ではないと思います。デイケアの活動だけではなく、今や書店や100均ショップには多種に渡る”大人のぬりえ”的なものが並んでおり、趣味として取り組まれている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

デイケアでの塗り絵、なぜ行っているのか、認知症や脳に対してどんな働きがあるのか、等についてはインターネットや、塗り絵ブックの解説に詳細が記されているので、ここではあえて触れません。今回は、自宅で認知症のご家族様と塗り絵をするにあたってのポイントや、より有効活用するためのちょっとしたコツについてリハビリテーションの観点からお伝えしようと思います。


大切なポイントは【環境】【声掛け】【アフター】の3つです。

【環境】

最初に、塗り絵に取り組むお部屋の状態はどうでしょうか?暑かったり寒かったり、周りがうるさかったり、お手元が薄暗かったり、逆にまぶし過ぎたりしていないでしょうか?

周囲の音による刺激が強すぎたり、テーブルの上にこまごまと物が散らかったりしている状態では、注意も散漫になり集中して塗り絵に取り組むことが出来ません。まずは安心して取り組めるお部屋の状態に整えましょう

お部屋が整ったら、筆記具や眼鏡を用意しましょう。塗り絵の選び方も大切です。細かすぎる塗り絵や、線の薄い塗り絵は見えにくいので、なるべくはっきりした線で、その方にとって親しみ深い、興味を引くような図柄のぬりえ(例えば、植物が好き→お花、旅行が好き→風景やその土地の名産品など)を選びましょう。筆記具の種類も、その方の手指の状態や握力、塗る強さに合わせて、色鉛筆、クレヨン、サインペン、等を使い分けるといいですね。


【声掛け】

さて、環境が整ったら、声掛けです。勧め方ひとつで取り組む意欲が変わってきます。「頭の体操だから、やって」「リハビリだからやりましょう」まあ、その通りなのですが、押し付けるような勧め方では興味もわかないし、やってみたいなとも思えないですよね。人に言われてさせられるのと、自分の意思でしているのとではリハビリテーションとしての効果も全く異なってきます。塗るという行為の前に、塗り絵に注意を向け、かつ興味を持っていただくことが大切です。

まずは、絵を一緒に眺め、何が描かれているのかを一緒に確認しながら色を塗る準備をしていきます。例えば、『縁側でスイカを食べている幼い兄弟』のイラストだったら、「おいしそうに食べてるね、○○さんは今年スイカ食べましたか?」「かわいらしい兄弟だね。何歳くらいかな?」

絵の様子を確認したら、「せっかくだから、もっとおいしく見えるようにスイカに色を付けてみましょうか」と声掛けをし、ご本人が出来そうなら塗っていただきます。塗らなければ、色を選んでいただきこちらで塗ってもよいでしょう。色が付いたら「赤くて甘そうなスイカになりましたね」「じゃあこっちは・・・?」と少しずつ段階を踏みながら塗り進めていきます。お一人で取り組めそうならば、途中疲れないように休憩の声掛けをする程度にしてあとはご本人に任せてそっと見守ります(しつこすぎる声掛けは逆にお邪魔になるので注意)。集中する時間が取れそうなら、ご家族は近くで家事をしていてもよいでしょう。


【アフター】

塗り終わったらそれで終わり、ではもったいない!完成後の展開も大切です。

まずは、作品の完成をねぎらい、一緒にお茶でも飲んで休憩しながら、作品を鑑賞しましょう。「力強く塗れていますね」、「柱の木の色が味わい深いですね」「スイカの色が本物みたい」など作品を褒めたり、「○○さんの育ったおうちには縁側があったのですか?」など絵の情景から、その方の幼い頃の思い出を振り返るお話をしたりしてもいいでしょう。

そして、完成した塗り絵は引き出しに大事にしまっておくのではなく(そのままゴミ箱にポイは絶対にNGですよ!)、目につきやすい所に飾ると、折に触れ話題にすることができますし、また絵柄によっては季節を感じるきっかけにもなります。そのまま貼り付けるのもお手軽ですが、100均のちょっとしたフレームに入れたりするだけで作品のグレードがぐっと上がります。

もし、もうひと手間かけられるのであれば、一緒に折り紙を折って周りに貼ったり、マスキングテープで縁取りをしたりするとさらに作品が華やぎます。私が以前見かけて素敵だなと思った作品は、小さな兜の折り紙をフレームに見立て、菖蒲の塗り絵をぐるりと囲んでいたものです。季節を感じるし、アイデアだな~と思いました。さらに、余裕があれば、カットした折り紙やカラフルな丸シールをモザイク風に貼っていくことで、頭の体操にもなります。


リハビリテーションの目線で活動提供を考えると上記のようになります。長々と御託を並べてしまいましたが、ご家庭で取り入れる場合にはそこまで難しく考える必要はありません。あくまでもご参考程度に。まずは、一緒に楽しんでみようという気持ちがあればOKです。


ちょっとやってみましょう!

手近にあるメモ用紙に鉛筆で10円玉くらいの大きさの☆やハートを描いて、塗りつぶしてみましょう。次は500円玉くらいの大きさで。その次は、ハートを四つ円状に並べると・・・四つ葉のクローバーになりましたね。強弱をつけたり、鉛筆の角度を変えたりしながら、好きなように塗りつぶしてみましょう。

塗ってみてどんな気分になりましたか?


雨の季節、ご家族様とのおうち時間をより楽しく過ごすための一つのヒントとなれば幸いです。


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https://www.urawamisono-katayamaclinic.jp/