皆様こんにちは。
世の中は相変わらずの混沌に包まれていますが、季節は春から夏に向かって少しずつ確実に歩みを進めています。ゴールデンウィークに衣替えをされた方も多かったのではないでしょうか?この時季は夏のように暑かったかと思えば、急に上着が必要なくらいの寒さが戻ってきたりと、ジェットコースターのような気候の変化に、気持ちと身体のバランスをとるのが難しいですよね。
今日は高齢者の方と衣服との関係(産経新聞の記事より抜粋)、そしてご利用者様のご家族から多く聞かれる衣服についてのお悩み事について少しお話をしようかなと思います。
高齢者の方は加齢に伴う皮膚の変化や、温度感覚の低下で本人も気づかないうちに体に合っていない衣服を選んでいることがあります。
皮膚の変化を具体的に言うと、
皮膚の弾力が低下→下着などが肌に食い込みやすくなっている
皮脂分泌や保水力の低下で乾燥している→衣服との接触で摩擦が起こりやすい
などの状態にあるということです。
そして、温度感覚の低下は、
暑い寒いと感じる力が低下したり、体温調節機能が低下すること
を言います。
今では私たちが当たり前のように着ている『薄くて軽くて暖かい素材』の衣類は、高齢者の方にとってはあまりなじみがないため、どうしても重い服をたくさん重ね着してしまう傾向にあるのだそうです。着込みすぎると、体温の調整が難しくなるだけでなく、重さによる締め付けで血流も悪くなり、寒さへの対応力も低下するという悪循環に陥ってしまいます。
それを防ぐには、機能性素材(汗など体から発生する水分を吸収して発熱するようなもの)を使った軽い肌着がお勧めなのですが、気を付けていただきたいのは、高齢者の皮膚との相性もあるということです。摩擦による不快を避けるという点では、やはり綿や絹が優れていいるので、必ずしも機能優先ではなくその方に合った素材選びをしましょう。
以上のことから、高齢者の方の服装選びは、本人に任せっきりにするのではなく、家族や周囲の方が必要に応じてアドバイスすることが大切になります。
さて、理屈ではわかっていても、なかなかこちらが思った通りに行かないのが認知症の家族への対応です。
・暑いのにたくさん着込んでいて脱いでくれない
・部屋の中でもオーバーを脱がない
・お風呂にも入らないし、着替えもしてくれない
・汚れた衣服をずっと着ている
こういったご家族様からのお悩みがよく聞かれます。
一概に、「こうすれば一挙解決!」とはいきませんが、私たちスタッフが現場で実践している対応をいくつかお知らせいたします。
☆「上着が裏返しですよ」あるいは「背中に汚れが付いています、ほらここ」と本人が見えない位置の汚れや「ボタンが取れかかっていますよ」(もちろん架空の物です)とお知らせして、さりげなく上着を脱いでいただく
☆「新しい服を買って来たんだけど、サイズが合うかわからないからちょっと着てみましょう」と声を掛け、今着ている服と交換する
☆「とっても素敵なお召し物ですね。私も同じようなものが欲しいから、試しにちょっと着させてくれませんか?」とお願いしてみる(もちろん脱いだものを実際に着る必要はありません)
☆「お医者様からもらってきたかゆみ止めのお薬を塗るから、少し腕をまくって・・・(少しまくってから)あら、これじゃあちょっと塗りづらいから、一枚脱いでいただいてもよろしいですか?」と段階を踏んでぬいでいただく
上記をお試ししても拒否が強い場合、お時間に余裕があるならば一度外に出て一回りして戻ってきたタイミングでもう一度挑戦してみたり、お茶を一杯飲んだ後に再度挑戦してみると、リセットされて案外すんなりと脱いで下さることもよくあります。
大切なのは、脱がせよう、脱がせようと躍起になる(多分そんな時は知らず知らずのうちに怖~い顔や、強い口調になっているので、余計に怖がられたり不安になったりしてしまいます)のではなく、あくまでも「大変だからお助けしますよ~」「(逆に)私が困っているから助けてほしい」という姿勢で、ご家族様が役者になって演じることです。
まさに、『北風と太陽』ですね。
最後に今月の創作です。